温故知新――基本に立ち返り、学びを深める
「温故知新」という言葉があります。 昔のことや、これまで学んだことを振り返り、そこから新しい知識や理解を得るという意味です。 前回は、一人ひとりの違いを大切にする指導について書きました。今回は、その指導を支えるために、これまでの稽古や教えを振り返ることについて考えてみたいと思います。 少年部の稽古では、まず基本動作に取り組み、後半はその基本をもとにした応用技を稽古します。 基本で確かめた姿勢や足の運び、体の使い方を、相手との動きの中で生かす。うまくいかなければ、基本に戻って確かめる。この行き来によって、繰り返してきた動作の意味が具体的に分かり、理解が深まります。 基本に立ち返ることは、初心者だけに必要なものではありません。経験を重ねたからこそ、以前は気づかなかったことが見えてきます。一方で、身につけたはずの動きや意識が、時とともに薄れていることもあります。 だからこそ、指導する際にも、自分自身の学びの道筋を振り返り、基本を確かめることが大切です。 繰り返し稽古してきた技が十分身についていないとき、初めから相手に問題があると決めつけず、何を、どのような順序で教わってきたのかを確認します。 必要な説明は十分だったか。基本から応用へ進む間に段階が抜けていなかったか。 途中の大切な一歩を飛び越えてしまえば、技を見せ、説明を長々と繰り返すだけでは、相手の理解につながりにくくなります。学ぶ側も実際に動き、疑問を確かめる時間も必要です。 立場の違いに頼らず、どこでつまずいているのかを一緒に確かめ、必要なところから順序立てて伝え直す。相手の上達を心から支援する。 私は、こうした流れを合氣道の稽古で大切にしたいと考えています。 人に伝えようと工夫する中で、私自身が以前教わった言葉の意味を、より深く理解することもあります。実際に動いて確かめることで、短い言葉に込められていた要点が、自分の実感と結びつくのです。 受け継いだ教えから、今の自分に必要な学びを得る。私にとって、それが温故知新です。 少年部の子どもたちにも、一般部の皆さんにも、昨日まで分からなかったことが、今日の稽古で少しつながる。その喜びを感じてもらえるように。 そこで得た気づきを今の稽古と指導に生かし、皆さんとともに理解を深めていきたいと思います。