子供たちと大人たち。心師。

 子供たちに、よく一般部の話を例に上げる事があります。

「受け身のレベルは子供たちの方が遥かに高い。」

「挨拶や礼儀、素直な姿勢。」

「子供特有の技の柔軟さ。」

一般部に対して子供たちを、「ここは君たちの方がいいよ。」と高評価します。

ですので、当然一般部の大人たちを、時には低評価にしてしまう場合もあります。(笑)

一見、一般稽古に来られる大人たちには、あまり耳心地の宜しくない事ですし、そんな事を平気で言い放つ私も、一般部の大人たちに良く見られないかもしれませんね。(笑)

しかし、これにはしっかりとした理由があり、大人と子供、その差をあらゆる視点で子供たちに伝える事は、これからの柔軟で真っ白な子供たちの成長に大きく影響し、上手に使うと子供たちは【理解力】が確実に向上します。

これは、私が学んだ心理学から工夫した手法でして、物事を大人特有の体裁や妥協などから切り離し、現状をハッキリと伝え「良い事」「悪い事」を濁さず明確にしてあげ、「ではどうすればよいのか?」と子供たち自身に判断させる為に、あえて比較しやすい身近である同じ道場の一般部を引用しています。

これは私自身の自己犠牲を伴いリスクはありますが、これこそが、子供たちにとって最善だと思っています。


では、そんな教え方や子供たちへの接し方について、何故そのようにするのか?になります。

まず大人たちは、物事の比較について、このようなことを子供たちにこう言うはずです。

「他人と比較するのはやめましょう。」

通常はそう言われます。

それは他人と比較して、過信してしまったり、逆に自分を卑下したり、相手を羨ましがったりして自分の心を消耗させてしまう場合があるからです。

「自己肯定感」に関係してきます。

つまり、他人からの評価が良ければ基本的自己肯定感が上がり、確かに「自己肯定感」が高い人は「他人からの評価」という他人軸で生きていて、それによって自己肯定感が上がったり下がったりするわけですから、「いい子」であろうとしてしまいます。

では、「いい子」と評価されなかったら、「ああ、自分はダメだ」「自分は何もできない」などと自己否定をしてしまい、どんどん、「基本的自己肯定感」が低くなり、自信も失くしてしまうでしょう。

ですので通常は他人軸の評価による比較はやめましょうと言えます。


しかし、他人と比較してみてわかることもあります。

一方、他人と比較したからこそ、自分を理解できる、物事を改善できる、ということもあります。

例えば魅力的だなと思った人と自分を比較して、自分に足りないものを見つけることができます。勉強ができる友だちと勉強方法を比較して、自分に足りないことを見つけることもできます。

これを心理学用語では「モデリング」とも言います。

モデルになる人物を見つけ、その人物をお手本にする、というものです。この人をモデルにしたい、と思うのは自分にないものを持っているから「自分もこうなりたい。」と思うからです。つまり、自分と比較しています。

このように相手の良い点を見つけ自分に取り込もうとするための比較は自己成長のためにとても良いことなのです。

そして、子供たちは自分なりに、大人へ対しての評価を常に感じています。

親御さんなどの身内とは別の、「他人の大人」に対してです。

お父さんやお母さんは、子供に対して絶大で絶対的な愛がありますので、子供たちはその愛を感じて安心感もありますが、他人に対しては時に信頼感などの判断が難しくなります。

成長を促す「比較」を正しく教えてあげる。

まとめますと、大人になると体裁や社会関係などで妥協したり、見て見ぬ振りなど、人によってはその様になってしまいますが、それを直視した子供は、「え?何で?」と思ったり、他人と比較したらダメと言う大人も、気が付かない内についつい人を比較していたり。そんな時、子供たちは(私たち僕たちにはこうしろと言うのに、大人は出来てないじゃん・・・。)と、率直に感じ取ってしまいます。

そんな子供たちも、いずれ大人になります。

新たに社会人となった今の子供たちは、仕事などで上司から叱責されたりされるかも知れません。

理不尽な命令を受ける場合もあるかも知れません。

そんな時、自分の心では納得出来ません。

反発心、仕事が嫌にもなります。しかしやらざるを得ません。

つまり、自分の心と葛藤してしまいます。

じっと堪え忍耐強く、自分の心を正しく保って欲しい。

ですので、私自身、同じ大人として、大人の悪い部分を認め、今の子供たちの良い部分を、そのまま大人になっても忘れないで欲しいという願いを込めたメッセージとしてでもあります。

私は、子供たちにとって、合気道の稽古は「技を教えた、はい終わり。」ではなく、これから成長する子供たちの心の師、「心師」で居れたらと思っています。


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