筋力と自信と胆力。
皆さんは「腕力にものを言わせて」とか、「筋力が衰えた」などの言葉をご存じだと思います。
そんな筋力。
歩いたり走ったり重いものを持ち上げたり、子供でしたら鉄棒にぶら下がったりと、人間はその場で必要な筋力で動くのは当たり前なのですが。
そんな筋力は、全身を同時にフル活用する動作にも関わりがあります。
そして、この【同時進行させる全筋力】を最も必要とされているのが武道です。
(え?合気道には筋力は関係ないでしょ?)
そう思われそうですよね。(笑)
私の場合は元々格闘技出身でしたのでガッチリ系ですし、基礎腕力が普通より高めですので合気道の一般稽古でも、「腕力」優先のように思われそうですし、たまにそのような事を高段者の方に言われる事があります。(笑)
見た目の先入観から来ることですし仕方ないのですが、そもそも、いままでやってきた柔道でも空手でも、試合などでもそうなのですが、実は腕力だけで動く動作は一切無ありませんし、それだけでは試合には勝てません。
合気道ではどうなるのかと言いますと、鍛えた全筋力をフルに使った技は強烈になります。
勿論、ガッチガチに力むのは逆効果ですが、スピードやバネのような特化させる鍛えた全筋力で放つ技は、受ける側の反応や受け身レベルが低いと確実にその人は怪我をします。
当身も受け切れないと思います。
ところが、合気道ではその全筋力についての説明がほとんどありません。
(合気道には力はいらない。)=(筋力は必要ない。)と思われてしまいますよね。
そこがリアリティー有無から生まれる認識度と、教え方、学びに来る人達の(どこまでやりたいか?)の温度差なのだろうと思います。
では、少年部についてですが、まず本人達に同じように(どこまでやりたいのか?)と聞いています。
低学年は別ですが、まず全員が【本当の合気道を学びたい!】と答えます。(笑)
何でもアリなら私の出番なのでしょうが、とは言え流石に子供たちには安全性も考慮しなければいけませんし、これから成長して行く時期なので体に負担になるような無理はさせれません。
しかし、子供たちが本当の武道を学びたいと思っているのでしたら、踊りのような嘘の合気道も教える訳にもいきません。
嘘を教えてしまうと、子供たちには【過信】しか生まれないからです。
過去、別道場でも様々な子供達を見てきましたが、頭に過信しかない子は、万が一の時に身に感じるのは、確実に【こんなはずじゃなかった。】と思うはずです。
ですので、子供たちには現状の筋力でできる【過信】では無い【自信】を得れるように教えています。
稽古中、多分、子供たちは耳にタコができるくらい「膝!」「指!」「腕!」「足ー!!」と私に言われてます。(笑)
動作で機能していないパーツをその場で指摘してあげると、脳がインプットしていきますので段々とその部位が同時機能していきます。
実は、これが全筋力の同時動作の鍛錬なのです。
それが出来るようになれば、必ず体感的に「これか!」と本人は気が付きます。
それが、困難の先に得た【自信】に繋がって行きます。
以前書きました【受け身の強化】
合気道は2人で組んでする稽古ですので、技に対し反応の良さと素早い受け身は必要になります。
これは自分が怪我をしないためです。
そして、全筋力を使う合気道の技は強烈とは言いましたが、その危険性も分かれば配慮もできますので相手に怪我をさせません。
例えば(ケンカに強くなる)とか、(相手を倒す!)な考えや、(この人は自分より劣っている)のような【過信】を無意味と感じるようになります。
自分自身で得たその【自信】の繰り返しは、いずれ【胆力】に変化して行きます。
ちなみに【胆力】とは、恐れたり、尻ごみしたりしない精神力。もの事に動じない気力の事です。
【全筋力を上手く使えるようになれば、それは自信になり、いずれ胆力となる。】
それこそ、あらゆる場面で重宝します。
例えば、もしも子供たちが先々成長して、合気道とは別にやりたいスポーツに目覚めたとしても、今の稽古で得た事は必ず役に立ちます。
願わくば、ずっと合気道を続けてほしいのですが、子供たちの人生ですので、別の道に進んで行くとしても、その人生に役に立つ事を教えてあげるのも、私の使命なのだろうと思っています。