楽しい!と思う瞬間
気がつけば、私も武道の修行を始めてから52年が経ちました。
ここまで、よくぞ続けてこられたものです。(笑)
武道を長く修行することで、私生活にも多くの利点がありました。
スタミナや健康に良い影響を与え、現在では仕事にも大いに役立っているようです。
何より、武道の神様からの贈り物を授かることがあります。
相手の力量を感じ取る能力が身についてきて、(あ、この人はしっかりと修行しているな…)とか、(この人は強いな…)といったことが自然と分かるようになってきます。
まるでマンガのような不思議な話ですね(笑)
実はこれ、インプレッションと言われていますが、その分野でしっかりと訓練しますと身につく能力と言われています。
相手を見た瞬間、動きや歩き方、ちょっとした仕草、さらにはその人の重心の位置を何処においているか、など無意識に観察して自分の過去の経験や様々な要素から瞬時に分析するそうです。
私が大切にしている所作や礼節も、こうした視点から来ているのかもしれませんね。
ところで、子供たちに関しては人格形成が個性を生むと言われていますよね。
感情が豊かな子供やおとなしい子供など、私も、これまでに多くの子供たちを見てきましたが、それぞれ得意不得意がありますし、運動神経や物事の捉え方も個人差があります。
私も、まずそこを見ます。
保護者様の「大切な我が子」を通わせてくださるので私もプロに徹しなければいけません。
子供の身体能力の見定めなど、例えばですが、三半規管の強さはそれぞれ異なるため、合気道の稽古において受け身の練習を行う際には特に三半規管が弱い子供にはめまいが生じることがあります。
そこも相手の状態をしっかりと見極めて調整を行っています。
もちろん、弱いままではいられませんので、三半規管を鍛えることが可能ですし、少しずつ慣れていくように、身体能力の向上もサポートしています。
同時に、合気道は武道の道場であり本人の集中力が求められますので、集中力を高めることも目的の一つです。
稽古を真剣に取り組む子供と、なんとなく参加している子供をリアルタイムで観察しなければいけません。
指導員の中には、そこを「低学年だから仕方ない」や「女の子だから仕方ない」と言う人もいるようですが、私はそうは思いませんし、それこそが差別的に感じます。
勿論、年齢や性別に応じて教え方には工夫が必要ですが、しかし、指導の基準は誰にとっても同じにしなければいけません。
先日、子供たちにこんなことを話しました。
「合気道の楽しさって何だろう?」と。
私は、心から「楽しい!」と思える瞬間は、技がうまくできなかったり、難しいと感じたり、時には注意を受けたりすることを何度も繰り返し、その壁を乗り越えた時にこそ訪れると伝えました。
稽古を重ねて、初めて「やった!できた!」と感じる瞬間は本当に特別です。
私もその瞬間を見逃さず、心から褒めてあげます。
その繰り返しで、子供たちは、昇級や昇段を目指して努力したいという気持ちが芽生えてくれます。
そんな経験が子供たちの将来の成長に必ず役立つと信じています。